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多分野球中心の日記になります

横浜DeNAベイスターズを語るその④〜DeNAの捕手運用について考える〜

  9月の暑さは「残暑」と呼ばれることが一般的ですが、これは本当に残暑なのでしょうか。日本には四季がある、とはいうものの、現代に限れば夏と冬しか存在していないような気さえします。

 さて、久しぶりの記事投稿となりますが、1ヶ月何も書いてないうちにプロ野球情勢は当然ではありますが、大きく変化していますね。パリーグでは千葉ロッテマリーンズが快進撃し王者ソフトバンクに喰らい付くなど混戦を極めており、こちらはまだまだ白熱した展開を見ることができそうですね。

 

 一方で、すっかり夏が終わり冬のような静けさになってしまったのかな。そう感じざるを得ないのがセリーグです。気がつけば首位巨人と、2位を争う横浜阪神との差は9ゲームにも迫ろうとしています。マジックの点灯も時間の問題であり、加えて今季セントラルはクライマックスシリーズを開催しないともあり、Aクラスをかけた戦い!という、優勝チーム決定後の楽しみもありません。まだ半分近くの試合を残していながら、若手の1軍デビューや個人成績争いしか注目点のない、消化試合と化してしまいそうで寂しいですね。残暑すら残っていません。どうにか巨人を引き摺り下ろし、熱い展開へと持ち込んで欲しいところです。

 そんなセントラルですが、我らが横浜ベイスターズには少し追い風が吹くこととなりそうです。ファームで状態をあげ、新人とは思えないアーチを量産した蛯名選手や、ついにブレーク寸前のところまで登りつめてきた細川選手が1軍に参加。蛯名選手に関してはそう長くは起用されないかもしれませんが、元気な若手がベンチにいるというのはそれだけで意味がありそうなものです。さらに、長いこと情報が少なく行方不明と化していた坂本投手も復活。京山投手も153キロの豪速球を引っさげて復帰。今永平良両エース級、打線の主軸オースティン選手などの看板選手の復帰も間も無くでしょう。伊藤光選手も肉離れから回復したとの情報もありました。どうにかこうにか、今度こそフル戦力の総力戦で巨人に待ったをかけたいですね。

 

 さて気になったのが、その伊藤光選手です。

 春先の非公式戦から状態がおかしかったのは確かです。打撃や選球眼は流石でしたが、どうにも落ち着かない様子でした。私は素人であるため、配球云々に関しては何もわかりませんが、それ以前にグラブからボールをポロっと落としてしまったり、後逸してしまったり。確かに、うまく言葉では表現できませんが、違和感は覚えていました。

 

 そんな彼は開幕してからしばらく経過した後、降格されてしまいましたが、その時のラミレス監督の「捕手別防御率で判断した」という旨のコメントにもモヤモヤが残ります。データ野球で知られるラミレス監督ではありますが、それはデータと呼べる数値なのでしょうか。これには、一昨日(9/8)の試合の失点後の嶺井選手への懲罰じみた交代にも言えることですが、そこまで捕手が負わないといけない責任範囲は広いのでしょうか。

 そこで今回はDeNAの、もとい、ラミレス監督の捕手運用について、素人なりに考えていきたいと思います。

 

【現代野球における一般的な捕手の運用とは】

 

 まず現代プロ野球において、各球団では捕手をどのように起用しているのでしょうか。古田谷繁阿部城島等々、高い攻撃力と守備性能を備えた、絶対的な正捕手という存在は希少になりつつあります。2010年代中盤はその10年ほど前とは環境がガラリと変わり、捕手は全く打撃成績を期待できないポジションだという風潮が定着。日本ハム鶴岡選手がソフトバンクに移籍した際「ホークス、打てる捕手鶴岡を獲得!」という見出しでスポーツ新聞が出ており、鶴岡選手を侮辱する意味合いではありませんが、打てる、に入る方なのかな…とは感じてしまいました。

 

 しかしそれもそのはずであり、捕手は非常に過酷なポジションです。先ほど例にあげたレジェンドたちが異常なのであり、あのポジションを一流にこなしながら、かつ打撃でもタイトルホルダーレベルの水準を見せるなどという荒技は普通はできません。

 

 また、コリジョンルールが設けられてかなり改善はされたものの、怪我も心配されやすい場所でしょう。私も幼い頃は、野球ゲームのクロスプレーで「いけ!ぶっとばせ!」などとはしゃいでた記憶があります。ホームでの攻防は華があり見どころの一つではありましたが、あんな危険なことを普通にしていたと思うと、恐ろしい限りです。

 負担が大きい。怪我の心配もある。そして多くの選手の打撃レベルに大きな乖離がない。ともなれば、やはり用いられるのは併用制です。もっとも、控え捕手を多めに登録しているのは昔もそうかもしれませんが、現代では彼らはただの控えではなく、例えば決まった先発投手の日にはマスクを被るなど、スターティング出場も週に何度かありますね。昔はそれすら珍しいものだったと記憶していますが、今ではすっかり当たり前となっています。

 選手間では誰が正捕手か、を争いつつも、ベンチはそれぞれに異なる役割を与え、併用している。そういった球団が多いのではないでしょうか。現代は正捕手となると、ソフトバンクの甲斐選手や西武の森選手、ロッテの田村選手や阪神の梅野選手くらいではないでしょうか。オリックスの若月選手もどっしりと構えていますが、今季はともかく、昨季を見るに控え選手が充実していないのも絡んでるのではないかと見えます。まだ若く、これからに期待はかかりますね。

 

【横浜DeNAの捕手運用は】

 

 DeNAも例に漏れず、鶴岡選手の阪神移籍以降は、黒羽根選手が一瞬輝いたり、新人の戸柱選手がリードやフレーミングで評価されたりなど、なんとかそのシーズンを乗り切るための捕手はいたものの、複数年活躍する正捕手はなかなか現れていません。そのため、例を挙げれば嶺井戸柱高城の3本柱で日本シリーズまで駒を進めたように、併用制を取らざるを得ない状況が非常に長期にわたって続いています。相川亮二氏ヤクルト移籍後の新沼武山細山田等と言ったような時代に比べればはるかに選手層は厚くなり、それよりはレベルの高い併用ですが、やはりウィークポイントの一つに変わりはありません。

 もちろん、この事の深刻さを痛いほどわかっているのは他でもない編成。ベストナイン経験者伊藤光選手の獲得や、ドラフトでは数年後を見据えてポテンシャルの高い10代(入団当時)捕手を集めるなど積極的に動いてくれており、もう間も無く、正捕手がいる前提での捕手併用制への移行も或いは可能となるでしょう。

 

 しかし気になるのはその併用制の在り方です。

 まず、正捕手としてメインに据えたいのは伊藤光選手だというのは言うまでもないでしょう。盗塁阻止能力など、守備性能は戸柱選手や嶺井選手と大差ない或いは劣るかもしれませんが、何より打撃と打席内容が全く異なります。また、オリックス在籍時代は西勇輝投手や金子千尋投手等の好投手とも相性が良く、配球経験も踏んできた場数も格上となる存在。本当はできる限り固定したいところですが、故障も多く、休ませながら起用する必要はあります。

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昨季は8本塁打出塁率は規定未到達ながら筒香選手に続くチーム2位だった

 

 

 そして戸柱恭孝選手も1軍には欠かせないでしょう。捕手としてエース今永投手からの信頼も厚く、得点圏では打点にも期待ができます。しばらく打撃不振が続いていましたが、今季はミート力がレベルアップし、打率そのものに改善は見られないながらも、従来なら三振していたような難しい球を上手にすくい上げる技術が身につきつつあります。また、盗塁阻止に関しては伊藤光選手よりも信頼度は上かもしれません。

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投手からの信頼がある戸柱捕手。かつての打棒を取り戻したい

 

 嶺井博希選手もまた、1軍レベルの捕手でしょう。期待されていたそのバットから快音が響くことは少なく、また捕逸も目立つなど、私も1人のファンとして期待することができない時期が長いこと続いていましたが、今季は入団前の前評判通りと言っても過言でない打撃を披露。特に左投手に対して強さを見せつけています。同じ年のドラフトでプロ入りした阪神梅野選手よりもアマチュア時代は評価の高かった選手だけに、これからの活躍にも期待したいです。

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遂にベールを脱ぎつつある打棒。存分に発揮してほしい

 

 その他、濱口投手の専属捕手でおなじみ高城選手も控えています。今季は打撃でも思わぬアピールをしています。強肩強打のすごい奴が本当にすごい奴になれるか楽しみですがー

 

 ですが、本当に彼らはうまく併用されているのでしょうか。

 

 まず、伊藤光選手については、いかに打撃能力が強力と雖も、身体への負担を考慮するに正捕手ではあれど大事に起用する必要があるのは確かです。ただし、降格理由だった捕手別防御率、とはなんなのでしょうか。

 捕手別防御率とは文字通り、その捕手がマスクをかぶったときの投手の防御率なのでしょう。配球に問題があると打たれますし、リードとは配球だけを指すものではありません。時にマウンドに駆け寄ったり、座りながらもジェスチャーを出してあげたり。とにかく投手を気持ちよく投げさせなければなりません。そこに問題があると、捕手別防御率は悪くなるのでしょうか。

 とはいえ、理屈はわかるものの、あまりに曖昧すぎます。例えば、マウンドに立つ投手の調子が仮にゲームのように可視化されており、なおかつ設定で自由にいじれるとします。その中で、同じ投手が全く同じ調子で、同じイニング数を投げるという前提の上で、複数の異なる捕手にマスクを被らせる。これを複数回試行し出てくる捕手別防御率には一定の参考価値があるかもしれません。

 逆にいえば、そうでもしない限り、参考価値はないかのように思えますし、現実ではそのような前提を立てることが不可能です。投手だって、マウンドに上がるたびに調子も違うでしょう。調子が悪いなりに上手く運用するのが捕手の務めと言われればそれまでですが、捕手は魔法使いではありません。

 

 私はラミレス監督の手腕を非常に高く評価し、尊敬しています。私が横浜の野球を見るようになった頃は、それはそれはよく負けていました。大矢監督が私にとっての初監督だったことを今でも覚えています。そこから私の横浜ファン人生は始まっていますので、ラミレス監督が私の知る限り最高の指揮官であることは間違いないのです。

 

 それでも、ここに関しては疑問視せざるを得ません。

 無論、捕手別防御率はあくまで建前のコメントかもしれません。実際の理由はそんなところにはなく、事実伊藤選手は故障を抱えていました。ただ、建前だとしてもこのコメントは出して欲しくないのが本音であります。

 伊藤選手は昨季も故障による長期離脱を余儀なくされていましたが、その際には嶺井選手が奮闘していました。今季そのポジションにいるのは戸柱選手です。上述の通り投手陣からも信頼されていますし、打席内容にも改善は見られています。しかし、そうとは言っても打数は少ないながら3割打っている嶺井選手の出番があまりにも少なくはないでしょうか。

 戸柱選手が明らかに優れた成績を収め、嶺井選手が明らかに不振ならば当然でありますが、優先度の決め方がイマイチわかりません。監督目線では、戸柱選手の方を信用しているということになるのでしょうが、では戸柱選手の「捕手別防御率」はそれほど際立っているのでしょうか。そのデータを探してみたのですが、流石にこの指標を出しているサイトは見つかりませんでした。本来このようなことを語るのであれば正式な数値を自分で計算すべきなのですが、すみません、非常に時間がかかりそうなので。

 

以下のデータ表をご覧ください。2019年のものは見つかったので引用させていただきます。

野球データノート (2019年)

様より

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2019年度の捕手別防御率

 私がざっと表を見た感想としては「良い投手の時は、そりゃあ、捕手別もよくなるよ…」という身もふたもないものです。こちらは先発投手に限定した計算のようですが、確かに昨季は伊藤光選手は優れた数字です。しかし、捕手別防御率が良いから使っていた、そういうわけでもないでしょう。それもあるとして、何より打撃がよかったから、のはずです。また、防御率はイニング数によって印象が変わるものでもあります。同じイニングで計算した結果これならば、先ほども述べたように参考になるのかもわかりませんが、これだけで嶺井のリードはひどい!と言ってしまうのはかわいそうなものです。

 

 あくまで2019年のものですが、確かに、嶺井選手と戸柱選手の比較に焦点を当てると、戸柱選手の方がリードが優れているのかもしれません。ですが、嶺井選手は昨季は守護神山崎康晃投手の登板時にはほぼ必ずマスクを被り、控えスタートの際でも抑え捕手のような役割も担っていました。相性がいいから、かと思われますが、捕手別防御率を口実にするのならば、ここも伊藤選手に組ませるべきなのではないでしょうか。

 

 そもそも、上述の通り伊藤選手離脱時に主にスタメンマスクをかぶったのは嶺井選手でした。失点や負けの部分でも今永・平良投手らに疲れが見え始めた夏場の時期とも重なりますし、第一に、防御率で起用を変えるのならば、今季のように戸柱選手を優先していた方が一貫性も生まれるというものです。

 また、こちらの指標には「捕手が関与できない失点が多い」という問題点が以前より指摘されてもいます。安打や四球をリード次第で抑えることは可能でも、失投を叩かれての本塁打やエラーとは記録されない野手の守備による出塁などは捕手ではコントロールできません。

 

 もちろん、リードのうまい捕手というのは実在します。私の世代だと、初めて「捕手のリードも大切だ」ということを教えてくれたのは古田氏や、当時中日の谷繁氏でした。コナミさんの看板ゲーム作品である某野球ゲームにも捕手能力の優劣があり、優れた捕手を使うと投手もパワーアップをします。現実に優れたリードをする捕手が実在するからです。近年だと、新人の頃の戸柱選手はそれこそそこを評価されていましたし、巨人の小林選手も有名ですね。

 

 ですが、果たしてDeNAに、こちらが明らかに優れているから優先的に起用する、と言えるまでの技術を持った捕手がいるのでしょうか。戸柱マスクの多い現状を見るに、少しばかり、打撃での結果を残している高城選手や嶺井選手が不憫に思えます。

 

【まとめ】

 

 おそらくですが、ラミレス監督による、伊藤選手や嶺井選手らに対する「捕手別防御率が云々」に関しては、表面上のコメントにすぎず、ほかの理由があることでしょう。そこを細かくネチネチ言ってしまった私は反省すべきですね。

 

 ただ、私の結論といたしましては、この併用制には幾分かの課題があるようにも感じます。仮に他に理由があったとしても、いくら捕手を3名登録してるとはいえ、スタメンマスクを早期に交代させては、終盤の代打の出し辛さなどの問題も生じるでしょう。

 コロナによる日程過密だからこそ、無理のない運用で各選手に活躍してもらいたいですね。