この地で風切り果敢に走れ

多分野球中心の日記になります

【横浜DeNAベイスターズを語る】その②〜機動力野球とは何か〜

 こんにちは。この地で風切りです。

 私は毎日Twitterにのめり込んでいる暇人なのですが、そこで先日面白いワードを見かけたので、そちらを今回の日記の題材とさせていただきたいと思います。

 そのワードこそが「ベイスターズ式盗塁」です。どうやら、DeNA所属の選手の放つ二塁打のことを指しているようです。盗塁とはなんぞや…?と思わずクスッとしてしまうパワーワードですが、今回は「では機動力野球とはなんなのか」私なりに考えてみました。

 

 言わずもがな、機動力とはスピードです。辞書を引きますと「戦略・戦術上の必要に応じ、軍隊として迅速に行動する能力」「状況に応じて素早く活動できる能力」との解説がありますが、野球では前者の方を指すでしょう。その最もたる例が盗塁。ヒットや四球等で1塁ベースに出塁し、敵の隙を伺い素早く二塁を陥れる。ハマると一気に得点のチャンスともなる、野球をやる上では欠かせない要素でしょう。それを阻止すべく、投手はクイックモーションの改良を、捕手は二塁への送球速度を高める訓練を行ってきた歴史もあります。

 盗塁の駆け引きは野球の見どころの一つでもあり、近年の日本シリーズでもソフトバンクホークスが魅せてくれましたね。2018年日本シリーズでは、甲斐拓也捕手の度重なる、対戦相手広島カープの盗塁封じ。2019年同シリーズでは代走のスペシャリスト周東選手がグラウンドを縦横無尽に駆け回り原巨人を苦しめました。

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圧倒的なスピードを誇る周東選手(ソ)現代機動力野球の代名詞だ

 また、機動力とは盗塁だけでは語れません。山賊打線と評され、豪打でパシフィック・リーグペナントレースを2年連続で制覇した埼玉西武ライオンズの『機動力』は抜きん出ており、ランナーの次の塁を狙う姿勢への意識、そのベースランニングスピードの高さは爆発的な得点力に繋がっていました。例えば、得点圏二塁にランナーがいたとしても、その走者の速度では当たりによっては生還できず得点には結びつかないケースもあり得ます。しかし、その走者がスピードに長けている場合は、外野の頭を超えずとも帰ってくる恐れがあります。これもまた機動力です。

 

 

 では、ベイスターズの野球は、というとどうでしょう。

 ご存知の通り、1番から6番までを長打のある選手で固める重量打線を武器に、困ったときはホームランを打てばいいという攻め方をしています(私はこれを迫撃砲打線と呼びます)。

 昨季の主な1番打者である神里(かみざと)選手は「犬よりも速い」という逸話を持つほどの快速ですが、僅かに15盗塁で、その成功率はある意味で驚異的な6割という数字。盗塁させたら4割の確率で二塁ではなくベンチに進むわけです。さらに、そこに続くのは乙坂選手の6個(成功率0.667)に伊藤光選手の5個(成功率5割)という、機動力とは縁のないチームであり、そもそも重視もしていないことが数字から読み取れます。

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スピードは大変な魅力のある神里選手。技術がついてくればー

 ですが、ベイスターズは昨季セントラルの2位に輝き、史上初の本拠地CSも開催。少なくとも、他のセントラルの4球団よりは結果を残したことになるのです。

 見事日本シリーズに進んだ2017年も盗塁数はチームで40個。パシフィックの盗塁キング、金子選手(西)個人よりも少ない数字です。しかし、貯金を8個作り、広島を打ち破りホークスともいい勝負をしましたね。

 また、「各駅停車」と揶揄されるほど走者にスピードがなく、いい当たりでも思いの外塁上の走者を進めることができないなど、残塁の起因の一つともなっています。しかしながら、何度でも書きますが、現状「戦うことができている」わけですね。

 もちろん、これら課題を克服した暁にはさらなる得点力が見込まれ、巨人を打ち破り悲願の優勝も視野に入る、かもしれません。

 しかしながら、身も蓋もないことかもしれませんが「できないものはできない」のです。

 

 「ラミレス監督は機動力を使わない」

 

 多くのファンや解説者がこう不満を述べる日も少なくはありません。ですが、私個人の見解としては「使いたいが、結局無理しないほうが強いからこうしている」のが実情ではないかと捉えています。

 事実、ラミレス監督は非常に機動力へのこだわりが強いと感じさせる部分が多いです。例えば、就任直後の2015年には春先に「新スーパーカートリオに期待!」と梶谷、荒波、石川の三選手の機動力に期待をしているコメントが出ていました。(スーパーカートリオ:前身、大洋ホエールズ時代に活躍した屋敷氏、加藤氏、高木氏のスピードスタートリオを指す)また近いところだと、昨季から「2番打者に桑原を置きたい」という構想を明らかにしており、その当の桑原選手の不振こそ長引いていますが、その代わりに抜擢された昨季の開幕2番打者は楠本選手。今季もオースティン選手の代役開幕2番は乙坂選手でした。

 スモールベースボールを取り入れたいという考え方を持っている監督ではあると思います。ただ、今のメンツで機動力にこだわっていては、いたはずのランナーがいなくなる、その恐れの方が高まるのです。それならどうするべきなのか。2番打者にはソト選手、宮崎選手、昨季であれば筒香選手と言った強打者を置き、少しでも得点効率をあげるのが正解でしょう。実際問題、それで戦えているのですから、少なくとも間違いではありません。自身のこだわりにとらわれることなく、柔軟に方針をシフトできる指揮官として私は好意的に捉えています。

 

 それこそ、冒頭で挙げた「ベイスターズ式盗塁」は理にかなっています。1塁から二塁を狙うよりも、最初から二塁を、果てはスタンドに放り込みホームを狙うのが、現在のベイスターズの戦力であればはるかに合理的となり得ます。

 

 機動力野球とは何か。それはただ足を使うことではありません。足が速い選手でも、塁に出られない。また、盗塁走塁の技術が不足している、といったことであれば、得点力の向上は見込まれず、最悪低下してしまう恐れを孕んでしまいます。

 

 無論、プロ野球とは色々な要素を高水準にまで引き上げなければ優勝を狙えない世界です。機動力を使わずともAクラス、今ある戦力を最大限に生かして得たAクラスと捉えるか、機動力がないから首位にまではなれないと捉えるか。そこはファン個人の考え方次第でしょう。

 これはあくまで現状のベイスターズのお話。ファームに目をやると、ドラフト1位入団のスピードスター候補、森選手や、快速で長打もある宮本選手。盗塁技術に改善が見られ、以前には先頭打者としてチームを牽引していた実績のある桑原選手らが汗を流しています。他にも関根選手や百瀬選手も、十分に1軍クラスのスピードがあるでしょう。

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スピードと顔の良さを誇る森選手。新たな時代を担ってほしいところだ

 

 足を活かす野球をするには、足を活かせる1軍の選手を揃えなければなりません。将来的にならそのような野球も実現可能でしょう。ですが、少なくとも2020年8月3日現在では厳しいのが現状。チームというものは数年で顔を変えます。今のチームに適切な形で力を最大限に発揮させ、まずは打倒原巨人。今年こそ優勝を掴みたいところですね。