この地で風切り果敢に走れ

多分野球中心の日記になります

横浜DeNAベイスターズを語るその④〜DeNAの捕手運用について考える〜

  9月の暑さは「残暑」と呼ばれることが一般的ですが、これは本当に残暑なのでしょうか。日本には四季がある、とはいうものの、現代に限れば夏と冬しか存在していないような気さえします。

 さて、久しぶりの記事投稿となりますが、1ヶ月何も書いてないうちにプロ野球情勢は当然ではありますが、大きく変化していますね。パリーグでは千葉ロッテマリーンズが快進撃し王者ソフトバンクに喰らい付くなど混戦を極めており、こちらはまだまだ白熱した展開を見ることができそうですね。

 

 一方で、すっかり夏が終わり冬のような静けさになってしまったのかな。そう感じざるを得ないのがセリーグです。気がつけば首位巨人と、2位を争う横浜阪神との差は9ゲームにも迫ろうとしています。マジックの点灯も時間の問題であり、加えて今季セントラルはクライマックスシリーズを開催しないともあり、Aクラスをかけた戦い!という、優勝チーム決定後の楽しみもありません。まだ半分近くの試合を残していながら、若手の1軍デビューや個人成績争いしか注目点のない、消化試合と化してしまいそうで寂しいですね。残暑すら残っていません。どうにか巨人を引き摺り下ろし、熱い展開へと持ち込んで欲しいところです。

 そんなセントラルですが、我らが横浜ベイスターズには少し追い風が吹くこととなりそうです。ファームで状態をあげ、新人とは思えないアーチを量産した蛯名選手や、ついにブレーク寸前のところまで登りつめてきた細川選手が1軍に参加。蛯名選手に関してはそう長くは起用されないかもしれませんが、元気な若手がベンチにいるというのはそれだけで意味がありそうなものです。さらに、長いこと情報が少なく行方不明と化していた坂本投手も復活。京山投手も153キロの豪速球を引っさげて復帰。今永平良両エース級、打線の主軸オースティン選手などの看板選手の復帰も間も無くでしょう。伊藤光選手も肉離れから回復したとの情報もありました。どうにかこうにか、今度こそフル戦力の総力戦で巨人に待ったをかけたいですね。

 

 さて気になったのが、その伊藤光選手です。

 春先の非公式戦から状態がおかしかったのは確かです。打撃や選球眼は流石でしたが、どうにも落ち着かない様子でした。私は素人であるため、配球云々に関しては何もわかりませんが、それ以前にグラブからボールをポロっと落としてしまったり、後逸してしまったり。確かに、うまく言葉では表現できませんが、違和感は覚えていました。

 

 そんな彼は開幕してからしばらく経過した後、降格されてしまいましたが、その時のラミレス監督の「捕手別防御率で判断した」という旨のコメントにもモヤモヤが残ります。データ野球で知られるラミレス監督ではありますが、それはデータと呼べる数値なのでしょうか。これには、一昨日(9/8)の試合の失点後の嶺井選手への懲罰じみた交代にも言えることですが、そこまで捕手が負わないといけない責任範囲は広いのでしょうか。

 そこで今回はDeNAの、もとい、ラミレス監督の捕手運用について、素人なりに考えていきたいと思います。

 

【現代野球における一般的な捕手の運用とは】

 

 まず現代プロ野球において、各球団では捕手をどのように起用しているのでしょうか。古田谷繁阿部城島等々、高い攻撃力と守備性能を備えた、絶対的な正捕手という存在は希少になりつつあります。2010年代中盤はその10年ほど前とは環境がガラリと変わり、捕手は全く打撃成績を期待できないポジションだという風潮が定着。日本ハム鶴岡選手がソフトバンクに移籍した際「ホークス、打てる捕手鶴岡を獲得!」という見出しでスポーツ新聞が出ており、鶴岡選手を侮辱する意味合いではありませんが、打てる、に入る方なのかな…とは感じてしまいました。

 

 しかしそれもそのはずであり、捕手は非常に過酷なポジションです。先ほど例にあげたレジェンドたちが異常なのであり、あのポジションを一流にこなしながら、かつ打撃でもタイトルホルダーレベルの水準を見せるなどという荒技は普通はできません。

 

 また、コリジョンルールが設けられてかなり改善はされたものの、怪我も心配されやすい場所でしょう。私も幼い頃は、野球ゲームのクロスプレーで「いけ!ぶっとばせ!」などとはしゃいでた記憶があります。ホームでの攻防は華があり見どころの一つではありましたが、あんな危険なことを普通にしていたと思うと、恐ろしい限りです。

 負担が大きい。怪我の心配もある。そして多くの選手の打撃レベルに大きな乖離がない。ともなれば、やはり用いられるのは併用制です。もっとも、控え捕手を多めに登録しているのは昔もそうかもしれませんが、現代では彼らはただの控えではなく、例えば決まった先発投手の日にはマスクを被るなど、スターティング出場も週に何度かありますね。昔はそれすら珍しいものだったと記憶していますが、今ではすっかり当たり前となっています。

 選手間では誰が正捕手か、を争いつつも、ベンチはそれぞれに異なる役割を与え、併用している。そういった球団が多いのではないでしょうか。現代は正捕手となると、ソフトバンクの甲斐選手や西武の森選手、ロッテの田村選手や阪神の梅野選手くらいではないでしょうか。オリックスの若月選手もどっしりと構えていますが、今季はともかく、昨季を見るに控え選手が充実していないのも絡んでるのではないかと見えます。まだ若く、これからに期待はかかりますね。

 

【横浜DeNAの捕手運用は】

 

 DeNAも例に漏れず、鶴岡選手の阪神移籍以降は、黒羽根選手が一瞬輝いたり、新人の戸柱選手がリードやフレーミングで評価されたりなど、なんとかそのシーズンを乗り切るための捕手はいたものの、複数年活躍する正捕手はなかなか現れていません。そのため、例を挙げれば嶺井戸柱高城の3本柱で日本シリーズまで駒を進めたように、併用制を取らざるを得ない状況が非常に長期にわたって続いています。相川亮二氏ヤクルト移籍後の新沼武山細山田等と言ったような時代に比べればはるかに選手層は厚くなり、それよりはレベルの高い併用ですが、やはりウィークポイントの一つに変わりはありません。

 もちろん、この事の深刻さを痛いほどわかっているのは他でもない編成。ベストナイン経験者伊藤光選手の獲得や、ドラフトでは数年後を見据えてポテンシャルの高い10代(入団当時)捕手を集めるなど積極的に動いてくれており、もう間も無く、正捕手がいる前提での捕手併用制への移行も或いは可能となるでしょう。

 

 しかし気になるのはその併用制の在り方です。

 まず、正捕手としてメインに据えたいのは伊藤光選手だというのは言うまでもないでしょう。盗塁阻止能力など、守備性能は戸柱選手や嶺井選手と大差ない或いは劣るかもしれませんが、何より打撃と打席内容が全く異なります。また、オリックス在籍時代は西勇輝投手や金子千尋投手等の好投手とも相性が良く、配球経験も踏んできた場数も格上となる存在。本当はできる限り固定したいところですが、故障も多く、休ませながら起用する必要はあります。

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昨季は8本塁打出塁率は規定未到達ながら筒香選手に続くチーム2位だった

 

 

 そして戸柱恭孝選手も1軍には欠かせないでしょう。捕手としてエース今永投手からの信頼も厚く、得点圏では打点にも期待ができます。しばらく打撃不振が続いていましたが、今季はミート力がレベルアップし、打率そのものに改善は見られないながらも、従来なら三振していたような難しい球を上手にすくい上げる技術が身につきつつあります。また、盗塁阻止に関しては伊藤光選手よりも信頼度は上かもしれません。

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投手からの信頼がある戸柱捕手。かつての打棒を取り戻したい

 

 嶺井博希選手もまた、1軍レベルの捕手でしょう。期待されていたそのバットから快音が響くことは少なく、また捕逸も目立つなど、私も1人のファンとして期待することができない時期が長いこと続いていましたが、今季は入団前の前評判通りと言っても過言でない打撃を披露。特に左投手に対して強さを見せつけています。同じ年のドラフトでプロ入りした阪神梅野選手よりもアマチュア時代は評価の高かった選手だけに、これからの活躍にも期待したいです。

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遂にベールを脱ぎつつある打棒。存分に発揮してほしい

 

 その他、濱口投手の専属捕手でおなじみ高城選手も控えています。今季は打撃でも思わぬアピールをしています。強肩強打のすごい奴が本当にすごい奴になれるか楽しみですがー

 

 ですが、本当に彼らはうまく併用されているのでしょうか。

 

 まず、伊藤光選手については、いかに打撃能力が強力と雖も、身体への負担を考慮するに正捕手ではあれど大事に起用する必要があるのは確かです。ただし、降格理由だった捕手別防御率、とはなんなのでしょうか。

 捕手別防御率とは文字通り、その捕手がマスクをかぶったときの投手の防御率なのでしょう。配球に問題があると打たれますし、リードとは配球だけを指すものではありません。時にマウンドに駆け寄ったり、座りながらもジェスチャーを出してあげたり。とにかく投手を気持ちよく投げさせなければなりません。そこに問題があると、捕手別防御率は悪くなるのでしょうか。

 とはいえ、理屈はわかるものの、あまりに曖昧すぎます。例えば、マウンドに立つ投手の調子が仮にゲームのように可視化されており、なおかつ設定で自由にいじれるとします。その中で、同じ投手が全く同じ調子で、同じイニング数を投げるという前提の上で、複数の異なる捕手にマスクを被らせる。これを複数回試行し出てくる捕手別防御率には一定の参考価値があるかもしれません。

 逆にいえば、そうでもしない限り、参考価値はないかのように思えますし、現実ではそのような前提を立てることが不可能です。投手だって、マウンドに上がるたびに調子も違うでしょう。調子が悪いなりに上手く運用するのが捕手の務めと言われればそれまでですが、捕手は魔法使いではありません。

 

 私はラミレス監督の手腕を非常に高く評価し、尊敬しています。私が横浜の野球を見るようになった頃は、それはそれはよく負けていました。大矢監督が私にとっての初監督だったことを今でも覚えています。そこから私の横浜ファン人生は始まっていますので、ラミレス監督が私の知る限り最高の指揮官であることは間違いないのです。

 

 それでも、ここに関しては疑問視せざるを得ません。

 無論、捕手別防御率はあくまで建前のコメントかもしれません。実際の理由はそんなところにはなく、事実伊藤選手は故障を抱えていました。ただ、建前だとしてもこのコメントは出して欲しくないのが本音であります。

 伊藤選手は昨季も故障による長期離脱を余儀なくされていましたが、その際には嶺井選手が奮闘していました。今季そのポジションにいるのは戸柱選手です。上述の通り投手陣からも信頼されていますし、打席内容にも改善は見られています。しかし、そうとは言っても打数は少ないながら3割打っている嶺井選手の出番があまりにも少なくはないでしょうか。

 戸柱選手が明らかに優れた成績を収め、嶺井選手が明らかに不振ならば当然でありますが、優先度の決め方がイマイチわかりません。監督目線では、戸柱選手の方を信用しているということになるのでしょうが、では戸柱選手の「捕手別防御率」はそれほど際立っているのでしょうか。そのデータを探してみたのですが、流石にこの指標を出しているサイトは見つかりませんでした。本来このようなことを語るのであれば正式な数値を自分で計算すべきなのですが、すみません、非常に時間がかかりそうなので。

 

以下のデータ表をご覧ください。2019年のものは見つかったので引用させていただきます。

野球データノート (2019年)

様より

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2019年度の捕手別防御率

 私がざっと表を見た感想としては「良い投手の時は、そりゃあ、捕手別もよくなるよ…」という身もふたもないものです。こちらは先発投手に限定した計算のようですが、確かに昨季は伊藤光選手は優れた数字です。しかし、捕手別防御率が良いから使っていた、そういうわけでもないでしょう。それもあるとして、何より打撃がよかったから、のはずです。また、防御率はイニング数によって印象が変わるものでもあります。同じイニングで計算した結果これならば、先ほども述べたように参考になるのかもわかりませんが、これだけで嶺井のリードはひどい!と言ってしまうのはかわいそうなものです。

 

 あくまで2019年のものですが、確かに、嶺井選手と戸柱選手の比較に焦点を当てると、戸柱選手の方がリードが優れているのかもしれません。ですが、嶺井選手は昨季は守護神山崎康晃投手の登板時にはほぼ必ずマスクを被り、控えスタートの際でも抑え捕手のような役割も担っていました。相性がいいから、かと思われますが、捕手別防御率を口実にするのならば、ここも伊藤選手に組ませるべきなのではないでしょうか。

 

 そもそも、上述の通り伊藤選手離脱時に主にスタメンマスクをかぶったのは嶺井選手でした。失点や負けの部分でも今永・平良投手らに疲れが見え始めた夏場の時期とも重なりますし、第一に、防御率で起用を変えるのならば、今季のように戸柱選手を優先していた方が一貫性も生まれるというものです。

 また、こちらの指標には「捕手が関与できない失点が多い」という問題点が以前より指摘されてもいます。安打や四球をリード次第で抑えることは可能でも、失投を叩かれての本塁打やエラーとは記録されない野手の守備による出塁などは捕手ではコントロールできません。

 

 もちろん、リードのうまい捕手というのは実在します。私の世代だと、初めて「捕手のリードも大切だ」ということを教えてくれたのは古田氏や、当時中日の谷繁氏でした。コナミさんの看板ゲーム作品である某野球ゲームにも捕手能力の優劣があり、優れた捕手を使うと投手もパワーアップをします。現実に優れたリードをする捕手が実在するからです。近年だと、新人の頃の戸柱選手はそれこそそこを評価されていましたし、巨人の小林選手も有名ですね。

 

 ですが、果たしてDeNAに、こちらが明らかに優れているから優先的に起用する、と言えるまでの技術を持った捕手がいるのでしょうか。戸柱マスクの多い現状を見るに、少しばかり、打撃での結果を残している高城選手や嶺井選手が不憫に思えます。

 

【まとめ】

 

 おそらくですが、ラミレス監督による、伊藤選手や嶺井選手らに対する「捕手別防御率が云々」に関しては、表面上のコメントにすぎず、ほかの理由があることでしょう。そこを細かくネチネチ言ってしまった私は反省すべきですね。

 

 ただ、私の結論といたしましては、この併用制には幾分かの課題があるようにも感じます。仮に他に理由があったとしても、いくら捕手を3名登録してるとはいえ、スタメンマスクを早期に交代させては、終盤の代打の出し辛さなどの問題も生じるでしょう。

 コロナによる日程過密だからこそ、無理のない運用で各選手に活躍してもらいたいですね。

【横浜DeNAベイスターズを語る】その③〜佐野恵太を分析する〜

 こんにちは。この地で風切りです。

 みなさん、所謂シンデレラストーリーのような物語はお好きでしょうか?無名だった人物が何かのきっかけを掴むことで、一気に成功や注目を手にすることをこのように呼ぶことが多く、様々な人々に夢や希望を与えることからも大変な人気がありますね。

 語源となった童話『シンデレラ』はもちろん、近現代の漫画・アニメ作品でも、無名が成り上がる、廃部寸前の部活動が奮闘し一躍有名になる、などといったシナリオの作品は多くの方々の心を揺るがしたことでしょう。

 これは創作上の話には収まりません。プロ野球の世界にも多く存在しています。

 例えば最もポピュラーなところはイチロー氏。松井秀喜氏やダルビッシュ投手、大谷翔平選手等のドラフト1位入団のメジャーリーガーとは異なり、彼はドラフト4位でプロ入りしています。決して、最初から注目されていた、というわけではなかったのです。

 また、福岡ソフトバンクホークスのエースである千賀滉大投手や、同チーム所属の甲斐拓也選手、周東佑京選手に至っては育成ドラフト出身と、正真正銘の無名からのスタートでした。オリックスバファローズのエース山本由伸投手も高校時代は決して有名ではなく、ドラフト4位。このような選手がプロの世界の第一線で活躍するというのは、多くの野球少年に、そしてファンに夢を与えることでしょう。

 

 さて、我らが横浜DeNAベイスターズにも、この例に漏れない選手が多く存在しています。ほんの一例ですが、ご紹介しましょう。例えばハマの番長と愛された三浦大輔現二軍監督はドラフト6位入団で通算172勝。石川雄洋選手も同順位で入団ながら、DeNA創設時には初代主将に就任。昨季には通算1000安打も達成しました。そして現在主将を務める佐野恵太選手もまた、ドラフト9位からのプロ野球人生が始まっています。

 前置きが長くなりましたが、今回は佐野恵太選手について、私なりに分析をしてみたいと思います。

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新主将の佐野恵太選手(左)。彼の活躍の秘訣に迫りたい

 

[佐野恵太選手の目覚め]

 DeNAの新主将、新4番打者は佐野恵太、と聞いてピンとこないプロ野球ファンも、開幕前には多くいたことだと思われます。それもそのはずで、彼は2019年終了時点では代打での出場を主としており、通算でも180試合に留まっていた控え選手でした。代打としての活躍は素晴らしいものでしたので、セントラル・リーグのファンの方であれば名前くらいはご存知だったかもしれませんが、それでもいきなりこの重役を任される、ということには驚きだったでしょう。

 主将で4番打者、というポジションには筒香嘉智選手(現タンパペイ・レイズ)が構えていたわけですから、そのポストに無名の控え選手が就いたわけです。

 チームには2年連続本塁打王のN.ソト選手や首位打者のタイトル実績のある宮崎敏郎選手。新助っ人のT.オースティン選手など、他にも4番を打つに相応しい強打者がいる中でのあえての4番佐野。今列挙した選手は全て右打者、というバランスの兼ね合いで左の佐野選手を据えることは理には敵っていますが、それでも疑問に思うファンは、私がTwitterを見る限りでは多く見受けられていました。まして主将も兼ねるわけですから、実績が少なく、今季からレギュラーへの挑戦、という立ち位置であった佐野選手には荷が重すぎるのでは。そう心配されていたわけですね。もちろん私も、否定まではしていませんでしたが、4番として育てるのが中心となり、大活躍は見込めないだろうと想像をしていました。今年は我慢して4番として育成し、来季以降のブレイクに期待、そのように描いていました。

 実際、オープン戦こそ打点王に輝き、開幕直前に合わせて本塁打を放ち始めるなどの調整力は見せつけてくれていましたので、その時点で想像より結果を残すかも、までは思いましたが、コロナで開幕は延期。6月の練習試合では終盤までほとんど快音が響かないなど「運」も悪かったかな、と思わざるを得ない状態でした。

 

 ですが、私は佐野選手、そしてその能力を新人の頃から見出し続けていたラミレス監督に謝罪しなければなりません。この2人をあまりに見くびっていた、その事実を、彼は試合に出るたびに突きつけてきたのです。誠に申し訳ございませんでした。

 8月3日現在では、ここまで全試合4番で出場し打率.345 5本塁打 21打点。安打数はリーグトップを走り、OPSは驚異の.935(OPS:野手の能力を測る指標の一つ。出塁率+長打率。.800を越えると非常にいい数字だとされている。柳田悠岐選手(ソ)や鈴木誠也選手(広)レベルになると1.000を超えてしまう)

 本当に開いた口が塞がらないですよね。ここまで立派に、文句なしの4番打者の成績を出すとは思ってもいませんでした。まだシーズンの3分の1しか消化していませんが、それでも文句がありません。1ヶ月以上も打率を維持し、本塁打や打点に至ってはここ数週間で一気に伸ばしてきました。研究もされるでしょうし、今後打てない時期は訪れるかもしれません。しかし彼ならその度にまた壁を超えるのではないか、そう感じさせられます。 

 

[佐野選手のデータを分析する]

  では、佐野選手はなぜこうまでも数字を残せているのでしょうか。ここからは、2020年度のこれまでの38試合、そして2019年度のデータを比較、深堀しながら、その秘訣に迫りたいと思います。(以下のデータは全て「データで楽しむプロ野球https://baseballdata.jpより引用しています)

 

 まずはBABIPに注目したいと思います(BABIP:ホームランを除くグラウンド内に飛んだ打球が安打になった割合。投手の被BABIPは平均で3割程度に落ち着き、そこからの乖離の大きさで運の良い悪いが数値に現れる。野手の場合は投手ほどの信憑性は薄いが、同じように運がいいのか悪いのか、なんとなくはわかるらしい)。

 例えば、昨季序盤から中盤にかけて大活躍し一気にレギュラーに躍り出た神里選手は、打率が.324で首位打者に立った時期の同数値は.442。非常に幸運だったとも捉えられ、現にシーズンが終わる頃には打率も.270付近まで収束していました。

 佐野選手はどうでしょう。

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2020年ここまでの佐野選手のBABIP

  こちらが現在の佐野選手のBABIP数値です。打率.345との乖離は小さいものですが、ここから打率低下の可能性を孕んでいるという表れでもあるかもしれません。とはいえ、昨季も打率.295に対して、BABIPは.346もありながら急な不振に陥ることはなかったわけですので、大した心配要素にはなり得ないと判断します。不振に苦しむ時期が訪れたとしても、この数値の影響というよりは厳しい配球やマークなどの他の要因が主なところとなりそうです。

 次に、得意なコースと選球眼について見ていきましょう。

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ここまでの佐野選手のコース別打率

 ご覧の通り、非常に内角に強いことがわかります。強打者たるもの内角を厳しく責められるのは宿命とも言えますが、昭和の時代の死球攻めならばともかく、これだけ内角を打てる力があれば問題なさそうです。高めに浮いてる甘い球を逃していないことも読み取れます。

 しかし対照的に、外角の低めのコースを苦手としているようです。今季は三振も非常に少ない佐野選手ですが、全19三振のうち3分の1近い三振をこのコースで喫しているのですね。

 こちらの図をご覧ください。

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ここまでの佐野選手の球種別安打割合

 直球に対して.390という驚異的な強さを示していますが、気になるのはフォーク系の変化球への打率。このことから見るに、外角低めの落ちる変化球を投げられると厳しいのかもしれません。

 ただ、これに関しては興味深いデータもあります。

 こちらは昨季の佐野選手のコース別打率なのですが、どうでしょうか。今年のこれまでとは全く対照的ですよね。内角にめっぽう弱く、外を叩いています。

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2019年の佐野選手のコース別打率

 先ほど苦手としているようです、としてあげた外角の低めのコースを最も得意としており、なんと4割という数字。

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2019年の佐野選手の球種別安打割合

 また、昨季の球種別安打割合を見ますと、フォーク系の球を得意としており、3割の数字を残しています。

 ということは、です。仮に今後、相手球団が佐野選手を研究し、今季苦手な外角低めを攻めたとしても、最初は苦しむかもしれませんが、適応できる可能性があるということですね。いよいよ、佐野選手は通年でも3割の打率を残せるのでは、という期待が膨らんできます。

 

 最後に、選球眼は大丈夫なのかについても見ていきましょう。どれだけストライクゾーンで弱点を限りなく減らしたとしても、ボール球に釣られてしまっては成績は落ちてしまいます。

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ここまでの佐野選手のボール球見極め率等

 この数値を見る限り、十二分な選球眼があると読み取れるでしょう。今季だけ、というわけではなく、昨季の見極率も71%という数値でした。強打者たるもの、打てない時期にどれだけ四球を稼げるかも重要ですし、また厳しい攻めに対してもボール球にまんまと手を出さないことも重要ですので、これは立派な数値と言えましょう。また同時に、ストライクゾーンでの空振り率の低さも素晴らしいです。今季は三振が少ない、と先ほども述べましたが、これはおそらく、打席毎に狙い球をしっかりと設定し挑めているから、かもしれません。こちらは代打で培った経験でしょう。

 ただ、これはあくまでここまでの数字。攻めが厳しくなり、それこそ筒香選手等へと同等の配球が敷かれた時、同じ見極率を維持できるとは限りません。

 

 しかし、佐野選手はここまで規格外の対応力を見せてきてくれました。また、佐野選手頼りの打線ではなく、ソト選手、宮崎選手、梶谷選手、オースティン選手、ロペス選手など他にも強力な顔ぶれが並ぶ打線の中の1人の打者にすぎません。佐野選手自身もこれは理解しているところで、1ヶ月も本塁打が出ないという苦しい時期でも、その時の自分にできることを考え、そのために仕事をしていました。これだけの選手がドラフト9位から出てきたというのは驚きです。正直、ここまでの通算210試合と少しだけでも十二分なお釣りがきます。

 

[ズバリ、今季の佐野選手の成績予想は]

 

 今日は佐野選手について語らせていただきました。まとめとして、これらデータ、そして佐野選手のデータには現れない対応力や野球選手としてのあり方を踏まえ、誰得でもありませんが、2020年120試合終了時点での佐野恵太選手の成績を予想してみたいと思います。

 

 打率.302 19本 68打点 OPS.890 という予想です。

 

 規定打席で3割に乗れるのではないか、本気でそう期待しています。

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私が本気で規定打席到達3割を期待する佐野選手。現実となってほしい

  あくまで私の主観ですし、データを都合よく捉えているだけにすぎないかもしれません。しかし、ファンとしてこのような分析や予想をするのは単純に楽しいものですね。まだまだセイバーメトリクスなどについては勉強中の身分ですので、BABIPの項については誤りや解釈違いもあったかもしれません。ご指摘などありましたらお願いいたします。

 

 では、今日はこの辺で。頑張れ、佐野選手!

 

 

 

【横浜DeNAベイスターズを語る】その②〜機動力野球とは何か〜

 こんにちは。この地で風切りです。

 私は毎日Twitterにのめり込んでいる暇人なのですが、そこで先日面白いワードを見かけたので、そちらを今回の日記の題材とさせていただきたいと思います。

 そのワードこそが「ベイスターズ式盗塁」です。どうやら、DeNA所属の選手の放つ二塁打のことを指しているようです。盗塁とはなんぞや…?と思わずクスッとしてしまうパワーワードですが、今回は「では機動力野球とはなんなのか」私なりに考えてみました。

 

 言わずもがな、機動力とはスピードです。辞書を引きますと「戦略・戦術上の必要に応じ、軍隊として迅速に行動する能力」「状況に応じて素早く活動できる能力」との解説がありますが、野球では前者の方を指すでしょう。その最もたる例が盗塁。ヒットや四球等で1塁ベースに出塁し、敵の隙を伺い素早く二塁を陥れる。ハマると一気に得点のチャンスともなる、野球をやる上では欠かせない要素でしょう。それを阻止すべく、投手はクイックモーションの改良を、捕手は二塁への送球速度を高める訓練を行ってきた歴史もあります。

 盗塁の駆け引きは野球の見どころの一つでもあり、近年の日本シリーズでもソフトバンクホークスが魅せてくれましたね。2018年日本シリーズでは、甲斐拓也捕手の度重なる、対戦相手広島カープの盗塁封じ。2019年同シリーズでは代走のスペシャリスト周東選手がグラウンドを縦横無尽に駆け回り原巨人を苦しめました。

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圧倒的なスピードを誇る周東選手(ソ)現代機動力野球の代名詞だ

 また、機動力とは盗塁だけでは語れません。山賊打線と評され、豪打でパシフィック・リーグペナントレースを2年連続で制覇した埼玉西武ライオンズの『機動力』は抜きん出ており、ランナーの次の塁を狙う姿勢への意識、そのベースランニングスピードの高さは爆発的な得点力に繋がっていました。例えば、得点圏二塁にランナーがいたとしても、その走者の速度では当たりによっては生還できず得点には結びつかないケースもあり得ます。しかし、その走者がスピードに長けている場合は、外野の頭を超えずとも帰ってくる恐れがあります。これもまた機動力です。

 

 

 では、ベイスターズの野球は、というとどうでしょう。

 ご存知の通り、1番から6番までを長打のある選手で固める重量打線を武器に、困ったときはホームランを打てばいいという攻め方をしています(私はこれを迫撃砲打線と呼びます)。

 昨季の主な1番打者である神里(かみざと)選手は「犬よりも速い」という逸話を持つほどの快速ですが、僅かに15盗塁で、その成功率はある意味で驚異的な6割という数字。盗塁させたら4割の確率で二塁ではなくベンチに進むわけです。さらに、そこに続くのは乙坂選手の6個(成功率0.667)に伊藤光選手の5個(成功率5割)という、機動力とは縁のないチームであり、そもそも重視もしていないことが数字から読み取れます。

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スピードは大変な魅力のある神里選手。技術がついてくればー

 ですが、ベイスターズは昨季セントラルの2位に輝き、史上初の本拠地CSも開催。少なくとも、他のセントラルの4球団よりは結果を残したことになるのです。

 見事日本シリーズに進んだ2017年も盗塁数はチームで40個。パシフィックの盗塁キング、金子選手(西)個人よりも少ない数字です。しかし、貯金を8個作り、広島を打ち破りホークスともいい勝負をしましたね。

 また、「各駅停車」と揶揄されるほど走者にスピードがなく、いい当たりでも思いの外塁上の走者を進めることができないなど、残塁の起因の一つともなっています。しかしながら、何度でも書きますが、現状「戦うことができている」わけですね。

 もちろん、これら課題を克服した暁にはさらなる得点力が見込まれ、巨人を打ち破り悲願の優勝も視野に入る、かもしれません。

 しかしながら、身も蓋もないことかもしれませんが「できないものはできない」のです。

 

 「ラミレス監督は機動力を使わない」

 

 多くのファンや解説者がこう不満を述べる日も少なくはありません。ですが、私個人の見解としては「使いたいが、結局無理しないほうが強いからこうしている」のが実情ではないかと捉えています。

 事実、ラミレス監督は非常に機動力へのこだわりが強いと感じさせる部分が多いです。例えば、就任直後の2015年には春先に「新スーパーカートリオに期待!」と梶谷、荒波、石川の三選手の機動力に期待をしているコメントが出ていました。(スーパーカートリオ:前身、大洋ホエールズ時代に活躍した屋敷氏、加藤氏、高木氏のスピードスタートリオを指す)また近いところだと、昨季から「2番打者に桑原を置きたい」という構想を明らかにしており、その当の桑原選手の不振こそ長引いていますが、その代わりに抜擢された昨季の開幕2番打者は楠本選手。今季もオースティン選手の代役開幕2番は乙坂選手でした。

 スモールベースボールを取り入れたいという考え方を持っている監督ではあると思います。ただ、今のメンツで機動力にこだわっていては、いたはずのランナーがいなくなる、その恐れの方が高まるのです。それならどうするべきなのか。2番打者にはソト選手、宮崎選手、昨季であれば筒香選手と言った強打者を置き、少しでも得点効率をあげるのが正解でしょう。実際問題、それで戦えているのですから、少なくとも間違いではありません。自身のこだわりにとらわれることなく、柔軟に方針をシフトできる指揮官として私は好意的に捉えています。

 

 それこそ、冒頭で挙げた「ベイスターズ式盗塁」は理にかなっています。1塁から二塁を狙うよりも、最初から二塁を、果てはスタンドに放り込みホームを狙うのが、現在のベイスターズの戦力であればはるかに合理的となり得ます。

 

 機動力野球とは何か。それはただ足を使うことではありません。足が速い選手でも、塁に出られない。また、盗塁走塁の技術が不足している、といったことであれば、得点力の向上は見込まれず、最悪低下してしまう恐れを孕んでしまいます。

 

 無論、プロ野球とは色々な要素を高水準にまで引き上げなければ優勝を狙えない世界です。機動力を使わずともAクラス、今ある戦力を最大限に生かして得たAクラスと捉えるか、機動力がないから首位にまではなれないと捉えるか。そこはファン個人の考え方次第でしょう。

 これはあくまで現状のベイスターズのお話。ファームに目をやると、ドラフト1位入団のスピードスター候補、森選手や、快速で長打もある宮本選手。盗塁技術に改善が見られ、以前には先頭打者としてチームを牽引していた実績のある桑原選手らが汗を流しています。他にも関根選手や百瀬選手も、十分に1軍クラスのスピードがあるでしょう。

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スピードと顔の良さを誇る森選手。新たな時代を担ってほしいところだ

 

 足を活かす野球をするには、足を活かせる1軍の選手を揃えなければなりません。将来的にならそのような野球も実現可能でしょう。ですが、少なくとも2020年8月3日現在では厳しいのが現状。チームというものは数年で顔を変えます。今のチームに適切な形で力を最大限に発揮させ、まずは打倒原巨人。今年こそ優勝を掴みたいところですね。

 

 

【横浜DeNAベイスターズを語る】その①〜ここまでのベイスターズ〜


 こんにちは、この地で風切り、と申します。こちらが初投稿の日記になります。

 梅雨も明け、朝から夕方まで、至る所からセミさんの声が元気に届く季節を迎えました。日差しもジリジリと照りつけますし、私の住む場所は地域がら湿気も多く、この私の脆弱な身体には非常に辛い、真夏の到来、というわけであります。こうも暑いと、自粛云々の前にそもそも家から出たくないですよね。

 さて、この季節「あつい」のは気温だけではありませんね。プロ野球ペナントレースも一層激化する、熱い季節ということです。新型コロナウイルスの影響により開幕こそ延期したものの、6月下旬に無事スタートし、7月31日現在では、多いところでは37試合が消化されました。今季は120試合の実施予定でありますので、既に3分の1近くは消化したことになります。

 その中で、我らが横浜DeNAベイスターズは5連敗を喫するなど苦しい場面もありましたが、ここまでは勝率5割とまずまずの健闘と言って良いでしょう。守護神山﨑選手の乱調や新助っ人T.オースティン選手も万全ではないのか欠場が多く、また直近では得点源であるN.ソト選手も苦しむなど、決してチームとしては最大限の力を出し切ることができない中でも踏ん張っていると評価できるかと考えます。復活を果たした梶谷選手、新主将佐野選手等の目覚ましい活躍といった嬉しい誤算に加え、柴田選手、乙坂選手などいわゆる「伏兵」の奮闘も大きいところです。

 ただ、私個人の見解としては、本来ならば現時点では貯金を作っておいて欲しかったというところが本音であります。

 例えば、濱口投手の投球がイマイチ物足りません。昨季もコンディション不良が目立ち、その能力の高さを満足に発揮できていないと感じてしまう場面が多かったかと思われます。

 

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ここまでの濱口投手の投球データ(データで楽しむプロ野球https://baseballdata.jpより引用)

 今シーズンは初登板こそ素晴らしい投球を披露したものの、翌週の巨人戦では5イニングで0奪三振。7月22日のヤクルト戦では最高球速が141キロと非常に低速なのが気になりました。また、四球が多すぎます。もともとそういう投球スタイルではありますが、昨季は82回で38個だった同数字が、今季は36回で24個と、自己ワーストのペースで積み上げています。

 本来、エース今永投手と二枚看板として機能しなければならない立ち位置の選手だと私は考えていますが、先発投手としてQS(クオリティスタート:先発投手が6イニング以上を自責点3以下に抑えること)を達成できたのは初登板だけ、というのがここまでです。平良投手の目覚ましい活躍でカバーできていますが、本来ならば、平良投手は嬉しい誤算ポイントとなり、上乗せ要素として機能しなければならないかと。6先発で1つ貯金を作り、防御率も3.28と数字は残している点、非常に厳しい言い方かもしれませんが、貯金ができていない要因の1つかと私は思います。濱口投手については、また別の機会に多くを述べたいと思います。

 他にも書きたいことは色々とあるのですが、画面下の文字数を見ますと、既に1300字を数えていました。今回はここまでとさせていただきます。

 

 このような感じでマイペースに何かを書いていきたいと思います。8月も頑張れ!横浜ベイスターズ